顔面蒼白な早苗の肩から腕を外す。 「ごめんな…、今大事な仕事があって迷惑かけられ無いんだ」 「ううん…あたしこそゴメン…」 眉を垂らしてエヘヘ…っと笑う姿に、偽りを感じた。 嘘を突き通すには、多くの嘘が必要になる。 結果的に、相手を傷つける事がわかってるのに、もう後に戻ることは出来ない。 「じゃ……、会社行って来るから」 痛む頭を抱えながら、会社……ではなく氷雨の家に向かう。 この頃には、習慣となっていたキスもなくなっていた。