リュネの王都校外の住宅街。


とある住宅の地下室でため息をついているのは、フズナ・ヒ・コロッシオである。



仕事机に座る彼の前には、3人の若い男が立っている。



フズナは厳しい声で問い詰めていた。



「余計なことをしてくれたものよ。一体誰の命を受けて王宮に忍び込もうとしていたのか」



若い男のうちの一人が、下をうつむきながら答える。



「われわれの独断であります」



「独断で何をしようとしていたのか」



「はっ……内務大臣の拉致であります」



フズナはまた、大きなため息をつく。




「おのれらは、あほうか?拉致してどうするのじゃ?そんなことをすれば内務大臣は賊にさらわれた被害者となるであろう。そうなれば、民の同情がどちらに集まるか、閣僚たちがどういう行動を起こすか、そこまで考えての行動かっ!」



「……」



フズナは、机の上のカゴからクルミをひとつ取り出し、苛立たしげに割り器にはさんで、


バチン!


とクルミを割る。



真っ二つに避けたクルミの身を、爪でほじくり出してかけらのひとつを口に運んだ。



3人の若者は、直立不動の姿勢で並んでいる。



そのうち一人は、片腕の肩口に大きく包帯を巻いていた。