王宮は、


リクにとっては庭のようなものだ。



バラ園も噴水も


小さい頃からよく遊んだ場所だ。



建物の中も、


よくかくれんぼをして叱られた。



パーティーの度に、


両親に連れられて来たからである。



林の中から一気に駆けてきたリクは、


息も切らさずに


木立のひとつに身を隠して


男達を見ていた。



ここはまだ


王宮の外園にあたる場所である。



男達は、


王宮を囲む塀を越えようとしている。


なにか手元に


縄のようなものを準備しているようだった。



リクは、


護身具になるような物がないか辺りを見回す。



夕闇の迫る中、


ほど近い菜園に


クワが投げ捨てられているのが見えた。



よし、あれだ。



リクは考えるよりも


身体が先に動くタイプである。



見つかってもかまうものか。


畏れを知らない若者は、


大胆にその菜園のクワを手に取り、


すぐさま男達のいる方へきびすを返す。



無言のまま、


猛然と三人の男のいる方へ突進する。