「キャッ」


すると突然腕を捕まれ、《彼》の腕の中へと抱きしめられた。
由奈はこの状態に理解が出来ずに驚くしかなかった。
《彼》の腕の中にすっぽりと収まってる状態。
今まで自分から《彼》を抱きしめることはあったが、《彼》からは初めてだった。
だが、大好きな人の腕の中にいる自分。
由奈は高鳴っている自分の心臓の音が聞こえないかと緊張していた。


「……やめた」


「え?」


しばらくの沈黙が続いたあと《彼》は口を開いた。
《彼》を見上げる形で見るとただ一つの方向だけを見ていた。
《彼》が発した言葉の意味はなんとなくわかっていたが、由奈は聞く。


「何を……やめたの?」


「あの女はダメ。僕に好きって言った」


由奈はドキッとした。
あの女……きっと電話の時の人だ。
その人は《彼》に告白したらしい。
《彼》と関係を持つ“女性”は全部を把握しての関係だ。
想いを告げるか、完全に飽きられるで終わる…。

彼女は終わりを、告げれたのだ。

由奈がドキッとしたのは自分も彼女と同じ想いを抱いてるから。
彼が何人の人と寂しさを埋めてるかはわからないが、きっと彼を密かに想ってる人は少なくないはずで。
自分も何度も、彼に思わず想いを伝えようとした時があった。
耐えきれず想いが溢れそうになった。
それでも今まで必死に隠し続けた。


夢をまだ見続けたいから。