*短編* それを「罪」と囁くならば

 




しかし、そんな静かな雰囲気から一転。


「痛い……」


「なぁに、暗い顔してんだ。いきなりどうした?」


由奈の頬を撫でていたヒカルの手が頬をつまんだ。
地味に痛くて涙目になる由奈を見て笑うヒカル。
痛みを訴えるがなかなか手を離してくれない。
おまけに由奈の頬で遊びだす。


「離せーっ」


「あははっ。ヘンな顔ー」


一生懸命その手を叩くと、やっと離してくれた。
じんわりと痛みがひろがる頬を撫でて、由奈は本当に泣きそうになった。
目の前のヒカルはそんな由奈を見てまだ笑っている。
口を尖らせて拗ねたように言った。


「何すんのよ」


「あまりにも暗い顔するから、からかっただけだよ。せっかく楽しい雰囲気だったんだから笑えよなー」


「………………」


ヒカルは自分の心配をしてくれいたのだ。
由奈はさっきまでの自分に少し恥ずかしくなった。
笑えとせがむヒカル。
ずっと笑っているヒカルを見てると、いつの間にか寂しさは消えていた。


「おっ。やっと笑ったな!!」


《彼》と夜は過ごせなかったけど、ヒカルのおかげで由奈はこの時間がすごく楽しいと感じたのだった。