いつもと同じ日常。

何度も読み返した書籍、日付しか書かない日記帳。

そこに書かれた自分の名前。

もしかしたら自分の物と言える物はこれくらいしかないかもしれない。

そこに大きく書かれた名前。御堂裕一、この世で一番嫌いな名前。

こんな名前に産まれて来なければ、こんな家に産まれなければ

自分はもう少しマシな生き方が出来たかもしれない。

鏡に映る自分が嫌い。この姿のせいで自分は籠の中の鳥。

そして今日もウンザリするような一日が始まるはずだった。

コン!コン!コン!

食事だろうと思って下に穴の開いた扉の前に向う。
「あれ?」

そういえばさっき朝食を済ませた。

コン!コン!コン!

また音が聞こえる。

それは逆の窓の方だった。

そこには小さな白い子猫が震えていた。
「ちょっと、待ってろよ!」

僕が逃げ出さないように窓も半分くらいしか開かないようになっている。

そこに上手く手を入れて子猫を部屋に入れた。
「お前、家族と離れたのか?」

外を見るが他の猫はいない。
「な・・」

苦しそうにブルブルと震える子猫。

とりあえず暖炉の前で拭いてやる事にした。
「冷たい。絶対助けてやるからな!」

子猫を僕の服の中に入れると僕は火傷するんじゃないかってくらい暖炉に近づいた。

一時間くらいたった頃だろうか

「にゃw」

子猫に体温が戻り始めた。

嬉しかった。子猫がいなくなってしまわない事に
「お前、僕と一緒にここで暮らさないか?」

そう言うと子猫は僕の顔をペロペロと舐めた。

僕に始めての友達が出来た。