「……じゃ行ってくる…………あ、忘れ物」
そう言って、竜人は名残惜しそうに私を見て、かるく唇にキスを落とした。
「もうッ!」
突然だったから驚いて、照れ隠しに竜人の胸を叩いた。
「んじゃあな」
そうしてかるく手を上げて竜人は走り去った。
正直言うと、竜人と離れるのがすごく怖かった。
なんだかわかんないけど、
竜人がすごく遠くに行っちゃいそうで。
私から離れて行くんじゃないかって。
すごく不安になったんだ。
「……早く帰ってきてね」
誰もいなくなった廊下に、ぽつりと呟いてみた。
そうして、
いつものように朝が来たけど、私の不安は当たってしまったのかどうか、結局竜人は帰って来なかった。
