「泣いていいから」
そう静かに囁くと、竜人は優しく私を抱きしめた。
「……う゛ぅ〜」
言いたいこと、たくさんあるけど。
とりあえず、竜人のスーツの隙間にあるシャツにむかって、
おもいっきり泣かせてもらった。
泣いてる間も、竜人はずっと頭を撫でてくれていて、
そのおかげで、意外に早く涙は止まってくれた。
「……1つ聞いてもいい?」
「んー」
「何で早く帰れたの?」
涙も止まったところで、私はずっと疑問に思っていたことを、口にする。
「あぁ、それは……内緒♪」
竜人はそう呟いて、曖昧に笑った。
「えぇー、何で?」
ブーッと口をつきだすと、竜人は片手で私の口を握った。
「ははッ!ブサイク!」
「ゆるひゃい!」
さっき泣いてたのがウソみたいに、私の心は浮かれている。
……こんなに単純になっちゃったのは竜人のせいだ。
そう言ったらまた怒られるから、そっと心の中にしまっておいた。
