「ほんと、危なかったわ、今のは本気で」


「よいか、あやつには十分に注意するのじゃ。そして、早く解毒薬を作ってあらかじめ自分を防御する事じゃ」


「う、うん。分かった。無理矢理恋人にされたらたまらないものね」


「うむ、健闘を祈るぞ」


そう言うと爺の気配は背後から消えた。幸も落胆した状態でとぼとぼと、あたしの前から立ち去った。


「やっぱり、侮れんな…幸」


その幸とのやり取りを見詰める視線が一本有ったのに気が付かなかったのは、後々、一生の不覚と思う事に成るのだった。


         ★


あたしは放課後「四角」から巻物と訳文を受け取ると、いそいそと職員室を後にした。


どうも「四角」に勘違いされて居る様で、あたしは古典に目覚めて、今、必死で勉強していると思われてしまった様だ。