スリーズ・キーノート

あっさりと言う父親に、僕は呆然とするしかなかった。
「朝、擦れ違ったよね。」
「ああ、あー……そういえば。」
どっかで見た気がしたのはそれか。

父は口べたなのか、静かな男なのか……。それだけで、後は口を開かなかった。僕は朝擦れ違った男を思い出し、父が朝からこの家にいた事を理解する。
……何しに来たのだろう?
やっぱり母さんとやり直したいから、とか?
それが顔に出ていたのか、父は鼻で笑ってから、静かに言った。

「……今まで、寂しい思いをさせたかな?」
いやそんな事は……って正直に言ったら怒られるかな。
「……そんな事は無かったみたいだね。」
「いっ、いやそんな……。」
焦る僕を、父は興味深そうに見ていた。成長した息子を見る父親ってどんな気持ちなんだ……?解るわけない。