嬉しかった反面、申し訳ないと思った。
「俺、渚に話しかけてくる」
そう言って立ち去ったイチの姿を、しばし眺める。上野さんの甲高く甘ったらしい声が聞こえて来た。
「あーっ確か、B組のえーと…壱原圭君だったよね。私、上野千紗です。よろしくね」
「ども…」
上野さんの様子を見れば、『渚と親しいイチにも気を配った可愛い女』を演じたつもりだったらしいが、イチには逆効果。
目の下の影が物語っている。
「渚君、肝試しのペア誰と?」
上野さんはつれないイチの態度を、これ以上続けさせまいと、さっと話題を切り替える。
「あ?誰とでもいいじゃねーか」
「えーっ私、教えてくれなければ、くれないほど、気にする方だもん」
「…うっぜぇ奴だな。浬子だよ。山下浬子」
「…り、浬子ちゃん?いいなぁ」
寒気がするほど、わざとらしい上野さんの演技なんかもう、どうでも良かった。
ただ『浬子』、そう呼んでくれた渚の声が何度もリピートする。
「俺、渚に話しかけてくる」
そう言って立ち去ったイチの姿を、しばし眺める。上野さんの甲高く甘ったらしい声が聞こえて来た。
「あーっ確か、B組のえーと…壱原圭君だったよね。私、上野千紗です。よろしくね」
「ども…」
上野さんの様子を見れば、『渚と親しいイチにも気を配った可愛い女』を演じたつもりだったらしいが、イチには逆効果。
目の下の影が物語っている。
「渚君、肝試しのペア誰と?」
上野さんはつれないイチの態度を、これ以上続けさせまいと、さっと話題を切り替える。
「あ?誰とでもいいじゃねーか」
「えーっ私、教えてくれなければ、くれないほど、気にする方だもん」
「…うっぜぇ奴だな。浬子だよ。山下浬子」
「…り、浬子ちゃん?いいなぁ」
寒気がするほど、わざとらしい上野さんの演技なんかもう、どうでも良かった。
ただ『浬子』、そう呼んでくれた渚の声が何度もリピートする。

