「私は、渚が心を隅なく開けるなら、だれでもいい。浬子の隣にいることで、アイツが居心地いいなら、それでいい」


二人が、知らない間にこんな風に会話していたなんて、気づきもしなかった。今、思えば
自分中心の、身勝手な行動だったと思う。

だけど渚のたまに見せる笑顔が、少しの進歩を感じさせて、嬉しかった。


「修学旅行、楽しみだね。その日ぐらい、ちゃんと教室来たほうがいいよ」

「無理。起きれねーし、そんな早く」

「イチと家近いんだから、起こしてもらって一緒に行けばいいじゃん。あ、あそこだったら、あたしも結構近いし、起こしに行こうか?」

「絶対勘弁。てか超きめぇ。」

「あのねー」


当分、嫌味しか出しそうもない、渚の口。

でも、もしかしたら、変わってくれるかもしれないという、淡い期待が胸の中を刺激した。