君が為に日は昇る

罠と知りつつそれでも陸野が此処へ突き進んだ理由。それはただ一つ。


「いるんだろ…?なぁ、餓鬼ぃ…!」


果実は熟しただろうか。食べたくて食べたくて仕方がなかった愛しい果実。


あの時、必死に堪えた欲情。早く、早く、早く。


━早く喰らいたい…!


表情は一転、生まれた狂喜を奮い起たせる。


いないはずがない。これを逃せばもう機会はないだろう。


真田がなんと言おうとも彼は陸野を狙うはず。それだけの理由がある。なぜならば。













因縁は必ず、惹かれ合うのだから。


「久しぶり、だな。」

「やはり、来たか…!餓鬼ぃ…!」


彼はひっそりと、民家の屋根の上に腰かけていた。


大きな大きな黄金の月がはっきりと映した彼の影。それを確かめた陸野は狂喜に顔を歪める。


「不思議な夜だ。街は騒がしいのに、こんなにも気持ちが静かだ。」


これが最後になるかもしれない。その戦いを前にして彼の心は僅かな高ぶりさえ見せない。


「いいのか?あんたの親玉はうちの先生が殺りにいったよ。」


だが空気は凍りつくように、彼の声を響かせるのだ。