君が為に日は昇る

振るうは野太刀。散らすは命。歩く姿は悪鬼羅刹。


その一振りは胴を両断し、その一振りは刀ごと頭を叩き斬る。


まるで紙屑が如く、兵の命を散らしていく。


斬る度に、また斬る度に、その眼を爛々と輝かせ、身に狂喜を宿す。


だが本陣にいる兵はただ立ち尽くしていた訳ではない。陸野に追従する隊士を斬り捨て、更に陸野を狙う。


しかし僅かな抵抗を見せながらも兵らは次々と命を散らしていったのであった。


「ちっ。役立たず共が。」


短く吐き捨て陸野は辺りを見回した。そこには骸が転がるばかりで己一人が残るのみ。


「やはりいねぇか…。」


表情は浮かない。そのはず本陣はもぬけの殻。大将の姿などどこにもない。


陸野は気付ていた。策を張り巡らせたこの街において、余りに突破が簡単であったことに。


恐らく真田がここにいないだろうことに。


しかしもう一つ気付いている、というより予測していることがある。


「…俺を生かしておくはずはない。」


戦いの目的は幕狼隊の壊滅。だからこそ真田は自らとこの街を囮にしたのだ。


幹部格の陸野を生かしておいては戦いに意味がなくなってしまう。