君が為に日は昇る

舞台には表と裏がある。


華やかで名声や脚光を浴びるのは表の人間。


誰にも誉められず、ただ淡々と仕事をこなすのが裏の人間。


━俺は裏。


己が必要とされるのは戦うこと。ただそれに尽きる。戦術など解らぬ。政治や時勢などもっての他。


この戦いが終われば、世は人斬りを必要としなくなる。侍の時代は終わる。


その対価は、平等。民が求めて止まなかった平和の訪れ。


民と己の安堵を得る為に。だからこそそれは人斬りの手で終わらせなければならない。


━その後は、先生のような方々に任せればいい。


そして彼は牙の雨に躊躇なく突進した。


刃の切っ先が肉薄する。それを眼前にしても尚、彼は更に加速。そして狼の前から姿を消した。


「どこにっ……!?」


隊士の一人が叫ぶ。と、彼の脇腹から鮮血が弾ける。隣にいた隊士も同様、背中を深く切り裂かれ声も無く崩れ落ちていく。


この包囲網を、夜太は易々とくぐり抜けていたのだ。


集団に囲まれた時。そこで躊躇してはいけない。如何に優れた包囲にも僅かな綻びはある。


焦らずそこを突き抜ければいい。


それは幼き夜太に亡き父が教えた戦い方の一つであった。