君が為に日は昇る

狼の群れは激昂した。


幾ら数は減れどまだ七名を残す誇り高き幕狼の隊士を全員斬って臥せるといいのけたのだ。


━この男捨て置けぬ。


狼の獲物は一匹に定まる。


幕狼の力とは個々の能力だけ止まらない。真に恐ろしきはその連携性の高さ。


どんなに強大な相手だろうと形を崩せば仕留めることは可能。


壱で崩し弐で仕留める。
死をも恐れぬ歴戦の兵達はその術を熟知していた。


夜太が再び構えるのと、狼の一匹が飛び出したのはほぼ同時のことである。


大上段に振り上げた一太刀が彼の頭上高く襲いかかる。


隙だらけだ。誰もがそう思った。そんなに刀を大きく振り上げては胴ががら空き。


案の定、その隙を夜太が見逃すはずはない。横薙ぎに一閃。右胴を断ち切る。


だが、それでいいのだ。


刀を振り終えたその瞬間、それこそが狙い。


狼が崩れ落ちるのを合図として他の狼は一斉に牙を剥く。


上段から兜割、中段からの平突き、下段から袈裟斬り。様々な斬撃が六方向から繰り出される。


それはまるで牙の雨。


崩れ落ちながら狼は、勝ち誇るように笑っていた。