君が為に日は昇る

「ありがとう。上条政次。」


直木はその口角をゆっくり吊り上げる。


「楽しかった。本当に楽しかった。」


真っ赤に染まる大地は決着を告げるもの。


「人生で最良の時間だったと自信を持って言えますよ。」


生死を賭けた戦いは終わり、新しい柔らかな風が二人の間を通り抜ける。


「いやいや。本当、楽しい斬り合いでし、た。」


崩れ落ちるは直木梅花。その胸にしかと突き刺さる壱の小太刀。


弐の小太刀は鎖を絡めとり、大地にそびえる。


「冗談じゃねぇって。楽しくなんかねぇや。」


荒くなった息を整え手で顔を抑える。右目から、流れ落ちる涙。


「まぁ悪い気分じゃなかったけどよ。」


それは真っ赤な血の涙。


「冥土の土産にくれてやるよ。俺の右目を。」


手を外すとそこには袈裟に走る傷。恐らく瞼が二度と開くことはないだろう。


勝負はほんの紙一重。


「さぁて、終わらせにいくかね。」


上条は歩き出す。強まった風の中を。振り返り願うのは清蔵と喜八の無事。


しかし助けることは出来ない。何故ならここは戦場で、己には成さねばならぬことがあるのだから。