君が為に日は昇る

空気の壁を拳よりも小さな鉄の塊が突き破る。


その速さたるや今までとは比較にならず、互いの間合いを瞬時に詰めていく。


まさに、渾身の一投。


━不思議だな。手に取るように解るぜ。


一投と同時に飛び出した獅子。その視界はいつも以上に広く明確な物に変わる。


━狙いはここだろ。顔面だ。見えるよ梅花。止まってみえる。


極限にまで高めた集中力。それは周りの時を遅らせる。上条の眼に映るのはゆっくりと時間の流れる空間。


迫る鉄塊。


━なぁ梅花よ。お前はとんでもねぇ。強い男だ。


徐々に徐々に。

━だけどよ。変わらなきゃいけないもんもあるんだぜ。

それは上条の顔面に近づく。


━終わりなんだよ。俺たちの時代は。人斬りの時代は終わりなんだ。


そして鉄塊は、上条の顔面を貫いた。


━ああ。負けたのか。


右手に持つ刃を前へ傾ける。しかしもう遅い。相手は一撃を放とうとしている。


きっとこの右手を掲げる時には全てが終わっているのであろう。


悪くない。この男を前に散れるのだ。悔いはない。


血風は、その動きを静かに、静かに止めていた。