君が為に日は昇る

それは上条が上空から振り落とされる鎖分銅を回避した時だった。


重ね続けた回避行動。最低限、最小限に留めたつもりの運動。


しかし食らえば無事では済まない攻撃の応酬。加えてその巨躯故の身体への負担。


回避行動の最中に突然、上条の膝が落ちた。


━やべっ…!



生じたのは僅かな隙。直木はそこを逃すような男ではない。


殺気が一瞬、膨れ上がった。


小枝をへし折ったような音。跳ね上がった上条の顔面。飛び散る鮮血。


あまりに強い衝撃の為だろうか。上条は後方に大きく弾き飛ばされ、仰向けに大地に叩きつけられた。


「いやいや油断大敵ってね。わざと左右に振り回したことに気付かないなんてまだまだ甘い。」


直木が仕掛けたのはある布石。


攻撃を左右に散らすことによって身体への負担を高める。


そうすればおのずと必勝の機会が生まれるというわけだ。


直木梅花という男は、戦い方。そして人体の仕組みをよく理解していた。


「いやいや。巧く行きましたねぇしかし。」


それはただ人間を壊すという、遊びの為に。


さも嬉しそうに、直木は笑っていた。