君が為に日は昇る

小太刀と言われる刀より若干短いそれを上条は右手を頭の上、左手は前に突き出すように構える。


これが彼本来の構え。以前夜太と立合った際とは別物と考えるのが正しいだろう。


その証拠に直木の額にはうっすらと汗がにじみ、いつの間にか距離をあけている。


最も、それは上条も同じことだが。


狭い空間。攻めぎ合い、ぶつかり合う殺気と殺気。


再び唸りを上げ始めた鎖分銅の音のみが響く。


「……ふっ!」


上条が動く。


距離を詰めるは一足。振るうは烈火の如き一太刀。先手必勝よろしく直木の頭上に現れる右の小太刀。


それは空を斬る。一歩後退した直木。追撃に備えるように身を低く屈めた。


その僅か上、横薙きに放たれた弐太刀が頭上を通過。削ぎとられた髪の毛は宙を舞う。


「むんっ!」


次に動いたのは直木の左手。素早く後ろに跳躍しながら投げ付けるのは鉄の塊。


それは上条の足元に逸れ地面を叩いた。舞い上がる土煙が視界を奪う。


つまりは布石。


土煙の中に再び前進した直木の姿。右手の鎌を身体ごと振り下ろす。


だがそこに上条の姿は無い。彼は既に安全な位置に飛び退いていたのだから。