君が為に日は昇る

━これは間違いだ。俺は強いんだ。戦えるんだ。

奮い起たせる自尊心。


耳鳴りのように音を繋ぐ鎖鎌はもうすぐ近くにまで迫ってきている。


━だけど、怖くて仕方がないんだ。


それは、はりぼて。有りもしない物を塗り固めた自尊心。


崩れていく。壊れていく。


━怖いよ。親父…。お袋…。


もう再び会うことは叶わないだろう父と母の姿を思い浮かべ、清蔵は泣いていた。


「…情けない男だ。」


男は鎖分銅の回転を止める。こんな情けない男にもうこれが必要とは思わなかった。


「貴様の首、この鎌で斬り落としてくれる。」


僅かに光を弾き、鈍色に輝く鎌。男が歩みよってくる。


━もう、駄目だ。


それを見ても清蔵は動けない。否、動かない。絶望と諦めが彼の身体を縛りつけていた。


「このような情けない男を信じたとは。上条政次、歴戦の勇士も堕ちたものよ。」

刀を遠くに蹴り飛ばし男は鼻で笑う。余裕か、些か饒舌になった男の言葉。


━………!


それに、清蔵の身体に残った僅かなものは応えた。


はりぼての心。崩れ去ったその奥に潜むのは。


上条が与えたちっぽけな勇気。