君が為に日は昇る

━見ろ。相手だって俺と変わんねぇ。人間だ。


鎖分銅に速度が乗っているのが解る。後数歩互いに歩み寄れば打ち出されるに違いない。


━弱い奴にはなぁ弱いなりに戦い方が…。


ならば踏み出される前に。


━あるんだよ!


止めてしまえばいい。


片手に持ち変えた長槍。それを大きく振り被ると。


「しゃああああ!!」


男に向かい渾身の力で投げ付けた。


直線的な弧を描き出し、長槍が飛ぶ。


意表をつかれた男。まさか得物を捨てるとは思わなかったか足が完全に止まっている。


━殺った…!


確信。土を耕し、稲を植え、身についた筋力。


それが生み出す速度と威力は伊達ではない。軽い鎌ごとき容易に弾き飛ばす。


かと思いきや。長槍がまさに男を捕えんとした瞬間。


長槍は男の眼前で粉々に砕け散った。


「嘘だろ…!?」


思わず漏れた声。


長槍を砕いた物。それは鎖分銅。男は既に回転状態にあったそれを長槍に叩き付けたのだ。


長槍の細い、柄の部分にである。一朝一石で出来る芸当ではない、その正確性。


再び清蔵は言葉を失う他無かった。