君が為に日は昇る

大通りから少し歩いた場所にある遊郭の前。そこでは二人の男が対峙していた。


一人は若者。もう一人は頭を剃りあげた男。互いに距離を図り合う。


若者、清蔵は眼前の男を見据える。


━強い。


こちらを睨みつける男にただ漠然と浮かんだ思い。他には何も感じない。


彼には戦いという戦いの経験はない。まして一騎討ちなども。


長槍は数日前に初めて使った。腰に差した刀も飾り同然。


それでも清蔵が退くことはなかった。


彼や喜八が逃げようとしたならば上条は死ぬ気で退路を確保しただろう。


━あの方なら絶対にそうする。


逃げようと思えば逃げれたのにも関わらず。


彼は退かなかったのだ。


━あんた。悪いけど俺は弱いよ?


声が出ない。心臓が痛い程に高鳴る。


━農民だからな。


一定の調子で徐々に、また徐々に廻る鎖分銅。音が風を切り裂き始める。


━けどよ。お侍様だけに戦わせて農民が戦わないんじゃ情けないだろ?


男からにじむ殺気。前に進み出てくる足。


━仲間殺されて尻尾巻いて逃げらんねぇだろ?


清蔵もまた前に足を出す。