君が為に日は昇る

「父上…きっとご無事で。」


黒間の村の面々は短いながら家族との別れを交していた。
これが今生の別れとなるやもしれぬ。
そう思うとなかなか離れることが出来なかった。


「お雪。しばしの別れだ。女衆の言うことをよく聞いてな。なぁにすぐに迎えにいくさ。待っていてくれ。」


だが誰も、最後とは口にしなかった。口にしてしまえば本当に二度と会えない気がしたから。


「約束よ?必ず迎えに来てね。夜太。父上と一緒に必ず迎えに来るのよ?」

「…うん」


夜太は短く頷いた。
元より源五郎の盾として死ぬ覚悟。きっと約束は果たせないだろうと思っていた。


「む?そろそろか…ついにやってきてしまったな…」


遠くから多くの蹄の音が聞こえる。幕府の軍勢に間違いないだろう。


「…夜太。お前にこれをやろう。」

「え?」


源五郎が差し出したのは彼の愛用する刀だった。


真っ青な鞘に差された刀は夜太の身の丈ほどもある長い物で正直、今の彼の身の丈には余る逸品だ。


「お前がその太刀を振るう所、見てみたかった。お雪を頼むぞ。」

「頭領。何を…」


瞬間、彼の意識は暗転した。