君が為に日は昇る

その時、源五郎の隣で黙って話を聞いていた夜太が口を開いた。


「俺が最初に切り込むよ。何人道連れに出来るかはわからないけど、時間は稼げる。急先鋒の役目は必ず果たす。」


その言葉にこの場にいた誰もが一様に驚きの表情を浮かべた。


『捨鬼』がこんなにも長く、はっきりと発言するのを聞いたのは初めてのことだから。


「…異存あるものはいるか?」


皆が皆、首を縦に振るうとは思わなかった。
安全な山に逃げたい者もいるだろう。


しかしその期待は見事に裏切られる。


誰一人として異を唱える者はいなかったのだ。それどころか皆覚悟の決まった表情をしている。


「餓鬼にここまで言われて黙ってられるか!」

「家族を守んなきゃよ!」

「ここで逃げたら男が廃るぜ!」


先程まで沈んだ表情を浮かべていたとは思えない程だ。男衆が威勢良く吠える。


夜太が放った言葉が男衆の折れかけた心を再び立ち直らせていた。


よく言ったと源五郎が夜太の頭を撫でる。


「行くぞお前ら!戦じゃぁぁぁ!!」

「うおぉぉぉぉぉ!!」


獣のように猛る。
黒間の最後の戦が始まろうとしていた。