とめどなく流れる涙と感情の波、そのすべてはこの最愛の娘に向けられていると言っても過言ではないだろう。どれほどの愛を注いでも足りないほどのかけがえの無いものなのだ。

 言ってしまえばもう少し楽になるのかもしれない。母親と自衛官の狭間で、ひろみの心は翻弄されていた。しかし──

「ひろみ……分かってるから。もう少し泣いていけ」

 武彦はそう言うと優しくひろみの肩を抱いた。

「ごめんね……ごめん」

 父親も母親も、そして夫も既に気づいているようだ、それが今生の別れになるかも知れない言うことを。

 正直者のひろみは小さな頃から嘘は大の苦手だったのだ。ましてや近くに居る人間がそれに気付かない訳はない。

 涙を流していたのはひろみだけではなかったのだ。

 いつまでも涙を止めない母親に抱かれた侑海が突然声を上げた。

「きれーい」

 ひろみは振り返り、その指差す方向に目を向ける。つられてその場に居た全員が見上げた夜空、そこには──

(やっぱり……そうなの?)