その日の前夜~地球最後の24時間~

「えっと、針灸院、わかります? は・り・きゅ・う・い・ん」

 読唇術でその言葉の意味を理解した美里は、大きく頷いて見せた。そして力強く則夫の手を握る。

 その心地よい感触に、手から伝わる優しさに、ときめきが胸を満たす不思議な感覚に、二人はとまどいながらも連れ立って歩いていった。


 そう、汗ばむ夏の日の出来事だった──


 そのハンバーグはこれまで食べたどのハンバーグよりもおいしいと、則夫は美里を褒めちぎっていた。美里はそれに最高の笑顔を作って応えてみせる。そんな食事をしている途中である、美里が思わず声をあげた。

「あー……」

「ん、どうかした?」

 カーテンを開け放した窓の外、広がっている夜空に一筋の流星が走っていくのを見つけたのだった。

 その美しさに美里は思わずボードを取り出し、興奮もそのままに感動を則夫に伝える。

「へえー、そんなに綺麗だったんだね」

 二人で共有できる感動は限られていたが、それを理解しようとお互いが歩み寄ることを忘れてはいない。則夫はあくまで想像の中でだが、美里の見た映像を思い浮かべていた。

 しかしそんな時いつも則夫は祈るのだった。


(神様、ひと目で良い……美里の姿を見させてください)


 そして則夫の手が美里の顔に触れた。

 鼻を、唇を、まぶたをなぞってゆく。しかし何度繰り返しても美里の顔が明確にイメージできることは、一度もなかった。





to be continue, this chapter──