しかし電話の先から聞こえてきたのは、番号が使われていない旨を伝える冷たい女の声だった。

 なぜかもう会えない気がしてならない。

 それもまた運命なのだろうかとあさきちは天を仰いだ。狭いビルの合間から顔を覗かせているどこまでも澄んだ夜空。

 その夜空を切り裂くように一筋の光が走った。

「お……」

 夜の仕事が長く続き、夜空をしげしげと眺めることさえ珍しいことだ。ましてや流れ星などここ数年来見ることなどなかった。

(え……)

 珍しいものを見たという喜びが不意に疑問に、そして不安へと変わってゆく。あまりにも長い滞空時間を見せるその流れ星は、明らかに違和感を伴うものだったのだ。

(あ、人工衛星ってのがあったな)

 そこに思い当たったあさきちは今湧いた疑問をすぐに捨て、そしてビールのお代わりを待ちわびる客たちが待つ店へと足を向けた。