自分には居場所がない、家にも、そして淳二の腕の中にも。何もかもを壊してしまいたい。満たされないのならば壊してしまえば良い。

 世界を、自分を──

 そんな破滅的思想に想いを巡らせる早百合の目に、鮮やかな光の筋が現れた。

「流れ星だ……」

 その呟きは誰にも聞こえなかったようだ。

 ひとり見上げる夜空に走り去るその煌めきは、思いのほか長く尾を引いていた。その神秘的な映像をぼんやりと眺めている早百合を、またしても淳二が引き戻す。

 そのことに少し苛立つ表情を見せた早百合は、場を立つと「今日は帰る」といきなりきびすを返していた。

「おい、何だよ、帰るんじゃねえよ」

 淳二はすぐに早百合の手首を掴むと、細い体を引き寄せた。

「ごめん、何か具合悪いみたいでさ」

 顔も見ずに無意識にその手を振りほどこうとしていた。淳二はあっさりと引き下がり「じゃあまた明日な」と言っただけでその手を簡単に離してしまう。

(そんなもんなんだって……あたしの存在なんて)