「…………」




「…………」




気まずいよね…やっぱり。




先生は、どんな気持ちで、私に『行ってこいよ』って言ったんだろ。




逆だったら…




もし先生の元カノが現れたりしたら…




『行ってきなよ』って言えるかな?




私には言える自信ないな…




「彩音ー!」




梨華が走ってきた。




ちょっと助かったって正直、思ってしまった。




「大丈夫だった?」




「うん…何とか…」




「瀬名っちには、きつく叱っといたから」




梨華の思いがけない言葉に驚く。




「えっ!?」




「全く全然、女心分かってないんだから!!」




「はは…」




全く、話しについていけず…2人を交互に見つめる事しかできずにいた。




「ご飯食べよっか」




「うん」




ふと先生を見ると、先生に渡し損ねたお弁当。




梨華の手元には、私の分と梨華のお弁当。




明らかに、おかしいよね…




「それ…誰の?」




「あっ…えーっと…」




『先生のために作ってきたんだ』って…




言えない…よね…




こういうのが距離だよね。




「いっぱい作りすぎて、余っちゃって…」




さっき、先生は私の事、大事な『彼女』だって言ってくれた。




離れてる今も、そう思ってくれてるんだね。




うれしかった。ほんとにうれしかった…。




「だったら…俺にくれない?」




「えっ…だって、さっき食べたんじゃあ…」




「上原が作ったの食べたら、リレー優勝しそうな気がしてさ。うまいって知ってるから」




そう言って、私の手から、お弁当を持って行った。