卒業式当日。

 卒業式は何事も無く行われ、焦る気持ちとは裏腹に何事も無く終わってしまう。


 伝えたい。

 伝えなくちゃ。

 伝えなくちゃいけない。―――何を?


 もう、時間が無い。

 伝えたい事があるのに、伝えたい事が分からない。

 でも、今を逃したら、絶対に―――絶対に…後悔する。

 あの時充分に味わった後悔の念をまた味わいたくは無かった。

 だが、現実はそう甘くは、ない。


 話しかけるタイミングも無い。勇気も無い。


 どうしよう

 どうしよう

 話したいのに

 伝えたいのに

 あぁ…

 こんなウジウジしてる自分が嫌になる。

 最近、自己嫌悪が多いな。

 けど、こんな私は





 ―――大嫌い。



 やがて、先輩達が在校生の前をどんどん通り過ぎていく。

 在校生と別れを惜しみながら歩く人もいれば、友と清々しく笑いながら歩く人もいる。

 そして先輩が今、―――私の前を通る。

 それは、最後のチャンス。

「っ!!」