いつまでも未練がましく先輩の事が好きでいる自分が嫌になると同時に、少々驚いていた。

 でも、今は先輩のメールへの返信が最優先だ。

 必死になって考えを巡らせる私。

【友達に頼むのは?】

【頼めると思う?】

 逆に聞き返されてしまった…

 具体的に何をするのか知らないのだから、そんな事言われても困るのだが…

【そもそも何をするんですか?】

 この質問がいけなかったのだろうか?

 すでに私は後に引けない所まで一歩を踏み出してしまっていた。

 やがて来た返信を見て顔を蒼白にさせる。

 だって、性行為について詳しく書いてあったのだから。

【それは…頼めませんね;】

【でしょ?それに今の関係を壊したくないんだ。でも、もう辛いんだ】

 私にどうしろと?

【えーっと…友達とは関係を壊したくないんですよね?】

【うん、そうなんだ。滝ノ上さん】

 期待が篭っているのは私の気のせいか?

【何ですか?】

【滝ノ上さんに頼んでもいい?】

「…はい?」

 私はつい間抜けな声を上げてしまっていた。

 私に?

 どうしよう、と混乱しながらも断われないだろうな、とどこか心の片隅の冷静な私は分かっていたようだ。

 部活でお世話になった先輩。

 そんな先輩の事が好きになってしまった自分。

 振られても未だに先輩の事が好きでいる自分。

 その先輩が自分に頼み事をしてきているのだ。

 …断われるわけが、無い。

 好きな人の役に立ちたい、そんな感情が働く。

 たとえそれが、どんな行為だとしても。

【いいですよ】

 たった一言。

 たった一言が先輩と私の関係を少しずつ狂わせていった。