目の前で幕が降りたよう。一瞬で僕は

闇の中に落ちた。


「バカヤローーー!!」

バイクに乗った男とパパの怒鳴り声が空

気中で火花を散らした。



茶パツは、声にならぬ声をあげながら、

僕に駆け寄った。


「ちっ、ちび!?ちび・・・!?

 しっかりしてぇえ!!」


走って追いかけたパパもしばらくして、

息を切らせながら戻ってきた。

ママも、大きな音を聞いて、驚いて飛び

出してきた。そして、僕や茶パツの姿を

見て震えた。


「ちび・・・!ちび・・・・!

 お願いだから目を開けて・・・

 お願いだから、お願いだから・・・!」


男と別れても、茶パツはこんなふうに泣

かなかった。

僕の頭の上で何度も何度も名前を呼ぶから、

出会ったあの日を思い出した。

あの日は雨が降っていたけど、今はどしゃ

ぶり泣き声の雨だ。