初めて奪うことを諦めた。



手にあったナイフは

床に落ちてしまった。



視界が滲んで行くのを感じる。



夜はとうに明けていた。



こんな絶望的な朝日は見たくなかった。


初めて、ナオに謝った。



“ゴメンナサイ”



それだけを絞り出した。



僕はバカだ。



告白したとき。


彼女の返事で諦めるべきだったんだ。



本当に好きなら。



違う。


好きだったから。



変えたいと……。



そう、思ったのに……。



僕の嗚咽だけが鳴り響く部屋。



この空間だけは。


まだ夜のままだった。