「悪いけど、あなたとはもう付き合えないから」



ジリリリリリリリリリリッ
目覚ましが私を起こした。
ふと時計を見ると、もう9時半だった。
(ヤバッ、今日莉那と買い物の約束してたんだ。)
慌ててベッドから飛び起きる。
急いで準備をして家を出ると、門の前で莉那が待っていた。
「もぉ~莉那、チャイム押してくれれば良いのに。」
口ではそう言ってるけど、本当に押されたらたまらない。
急かさないでゆっくり待っててくれる、そんな莉那が好きだ。
「じゃ、行こっか。」
莉那が私の手を引きながら言う。

私達がお店に着いたのは10時40分をまわっていた。
それから、いろんな店を回って私は、春色のワンピースと
赤いパンプスを買った。
莉那は、黒のジーパンに白のTシャツを買っていた。
これは前から思っていたことだけど、莉那の趣味ってさっぱり
してるなと思う。
気付いたころにはもうお昼過ぎだったので、近くの喫茶店に入った。
飲みものを注文し、私達は雑談し始めた。
「香織ぃ~、また彼氏ふったの?」
「そ。だって飽きちゃったんだもん。」
そう言って、呆れた顔の莉那に肩をすくめて見せた。
「だってB組の高橋でしょ?超イケメンじゃん、
もったいなぁい。」
(バッカみたい。)
私、佐藤香織は今まで27人の男と付き合ってきた少し異常な人間。
もちろん全部、向こうからの告白。
なぜそこそこにしか可愛くない私が、モテるのかというと
性格がいいから。
くわしく言うと、相手の好みを知り尽くしてその人の理想の性格の
女を、演じるってわけ。
その情報をどこで手に入れるのかって?
簡単だよ。
私、超能力持ってるもん♪人の心の中なんて、手に取るように読める。
物心ついた時から読めていた気がする。
男の気持ちを簡単に操れる私は、1度気に入った男は絶対手にする。
だから、別れてから次の男を見つけるのにそんな時間はかからないんだ。
でも、本当に他人の嫉妬心にはうんざりする。
この世には選ばれた人間とそうでない人間がいるんだから仕方ないのに。
私は選ばれた人間だ。
この能力を使えば、好きなように男が手に入る。
(次はどの男にしようかな。)
そんな事を考えていると、莉那が言った。
「ねぇ、見て見て。あの子かっこいい。」