秀一爺さんが南府立病院に入院したのが、今からちょうど二年前。今日のように蒸し暑い日中をどのようにしてやり過ごすか、試行錯誤していたときだ。
僕も二年前は大学生だったし、三毛猫のアズマもまだ生きていた。
あのとき、風呂場で横たわる秀一爺さんをアズマが見つけなければ、彼はとっくにこの世にはいないはずだ。
僕は秀一爺さんが太ったアズマを毛づくろいしている場面を思いだしてみた。
秀一爺さんのバットのような膝に気持ちよさそうに寝転がるアズマは、捨て猫のくせに妙に毛並みが良く、愛そうが悪い。僕には最後まで懐いてくれなかった。
なぜだか、秀一爺さんとアズマの組み合わせが頭に深く焼き付けられているような気がした。二人はある意味では似たもの同士なのかもしれない、僕はそんなことを考えながら一階の売店でアイスクリームを選んでいた。
