時刻はもう午後二時だというのに、窓から差し込む斜光には影が差し、僕の時間感覚を狂わせていた。
「さっきな、苺野ちゃんのパンティ見たんだ。透き通るような白」
いかがわしい発言をした秀一爺さんは堅そうなベッドから上半身を起こし、両手を広げてスチール製の縁を掴んでいる。三日前より無精髭が幾分か伸びたように感じ、それが仙人ではなく海賊に見えてしまった。
「苺野さんって、看護婦さんじゃないか。頼むから、そんな犯罪まがいのことしないでよ」
僕は正論を述べたつもりだったのだが、腹の中ではどこかで安堵していた節があった。それは、この秀一爺さんがまだ元気じゃないかという確認でもあった。
「まぁまぁ、それに今日は梨田さんのパンティも拝めたんだぜ」
「えっ」
思わず、小型液晶テレビの上に置こうとした紙袋を落としかけた。やめろよ と一喝しようと思ったが、咄嗟に感情を抑えた。声の強弱も抑えた。
「それ絶対ダメだって。怒られるのは誰からず僕なんだからね」
毎日看護婦さんの下着を覗いたり、病院内のギャンブラー達を集って雀荘を開いたり、数々の秀一爺さんの悪事が日の目にあたるのが怖かった。
