目の前に末恐ろしい婆さんがいる。


 ひしゃげた花の種を柄杓一杯に掬いあげたロク婆さんはいかにもこの操作を毎日行っているのか、とても手慣れた手つきで花の種を一つ残らず厚紙に包み込んでいった。


 まるで種をダイヤモンドの原石のように丁重に扱うロク婆さんの手は、使い古された魔法使いの杖みたいによれよれになっていた。


 そんな手じゃあろくに湯呑みも持てないだろうにと云う僕の小言を聞きながら、彼女は指先を信じられないくらい早さで動かしていった。



 それに生憎だが湯呑は持たず、ラム酒を水で割った「グロッグ」なるものを鉄製の水筒に入れて常に携帯しているそうだ。