『栄介くん、おじさんこれすっかり忘れてたよ』
中川がそう笑いながら、ストールを栄介に渡してきたのは、休みが明け、さらにもう一日たった水曜のことだった。
拾っておいてほったらかしにした自分達にも多少なりとも非はあるが、落としておいて探しに来ない持ち主も持ち主だ。
それに、何を思ったか、中川は出勤したばかりの栄介に笑顔でそれを渡し
『これ、スーちゃんに届けておやりよ。困ってるだろうね。』
などと言うのだ。
栄介は、正直なところとてもいやな気分だったが、雇い主の言うことを聞かぬわけにはいくまい。
それに中川の、首を45度に傾けて目を細めて微笑む姿に負けてしまったのだ。
『高田建設の受け付けにいるからね、線路を越えたらすぐだから』
そう言われて見送られた栄介だったが、地図を見るかぎり、線路を越えてからとてもじゃないが“すぐ”という場所に目的地はなかった。
仕方ない、今日は晴れているしたまには息抜きも必要だ、そう言い聞かせる他ない。
どこぞのスーちゃんが忘れたストールを届けに重たい重たいペダルを踏んで、自転車を走らせた。
中川がそう笑いながら、ストールを栄介に渡してきたのは、休みが明け、さらにもう一日たった水曜のことだった。
拾っておいてほったらかしにした自分達にも多少なりとも非はあるが、落としておいて探しに来ない持ち主も持ち主だ。
それに、何を思ったか、中川は出勤したばかりの栄介に笑顔でそれを渡し
『これ、スーちゃんに届けておやりよ。困ってるだろうね。』
などと言うのだ。
栄介は、正直なところとてもいやな気分だったが、雇い主の言うことを聞かぬわけにはいくまい。
それに中川の、首を45度に傾けて目を細めて微笑む姿に負けてしまったのだ。
『高田建設の受け付けにいるからね、線路を越えたらすぐだから』
そう言われて見送られた栄介だったが、地図を見るかぎり、線路を越えてからとてもじゃないが“すぐ”という場所に目的地はなかった。
仕方ない、今日は晴れているしたまには息抜きも必要だ、そう言い聞かせる他ない。
どこぞのスーちゃんが忘れたストールを届けに重たい重たいペダルを踏んで、自転車を走らせた。
