栄介は今『わけあって』大学を休学している。

気が付いたら同級生が皆、二歳も年下になっていたのだ。

大学の近くにとっていたアパートを出て、この商店街に越してきた。

アルバイトでのわずかな収入と、親からもらう多額の仕送りで生活をする。


『これ、やっぱり和美さんと弘彦さんは血が繋がってないんじゃなかろうか。ね?』

テレビを食い入るように見つめていた中川は、顎に手をあてて考える。

そんな簡単な展開、栄介はドラマの第一話の後半から気付いていた。

人間の考えることはわかりやすい。

ここで何をしたら正しいか、面白いか、注目を浴びるか。そういったことがみんな大好きだ。

栄介はそう思う。

大学での生活はいつもそうだった。
『普通でいたい』と思う人間はいない。

みんな普通で、それでいて普通でないのに。

今日はその後、二人の客が来て、二人とも同じような髪型になって帰っていった。

ストールは、ソファーの端に追いやられたままで、中川にすら忘れ去られていた。