――何なんだ、このあまりに遠い距離は。


手を伸ばせば届きそうなのに、目に見えない大きな川が僕と彼女の間に立ちはだかっていた。


織姫と引き裂かれた彦星はきっとこんな気持ちだったに違いない。


目の前を去っていく彼女の姿に僕の目頭はまた熱くなって前を向いた。


重厚な木製の祭壇の上、聖母マリアの生涯を描いた大きなステンドグラスが輝いている。
その前で彼女を待つ男が嬉しそうに頬をゆるめていた。

その顔を見て、心が熱くなる。


――どうしてアイツなんだ!


どうして自分ではなく、彼だったのだろう。


僕と何が違い、彼女はその人を選んだのだろう。



そんな想いがぐるぐると僕をきつく締めあげる。