下を向いているから私は黙り込んでしまった。
私が何も言わないから稜哉も何も言ってこない。
沈黙が流れる。
「さっきはありがとね。」
沈黙が耐えきれなくて私から破る。
「何が?」
稜哉は下を向いたままだった。
「競技が始まる前。稜哉たぶん“頑張れ”って言ってくれたんだよね?」
「ああ。」
「あたしそれでさ…言われるまで緊張してたのが解けたっていうか……楽になったんだよね。」
「へぇ。お前でも緊張するんだ。」
さっきまでの稜哉はどこに行ったんだと思うくらいの勢いでいつも通りの稜哉に戻っていた。
《さっきの稜哉かわいかったのにな…》


