「残念ですが・・・」
長い沈黙の後、先に口を開いたのは院長先生だった。
「なんで・・・なんで梨架が死ななくちゃいけなかったんだ!!」
「すいませんでした・・・」
「いえ・・・先生方が悪いのではありません・・・
インフルエンザ・・・インフルエンザなんかがなかったら・・・
俺が梨架のかわりに死んでたら・・・」
「そんなこと言わないで下さい!!」
俺は驚いた。
あんな静かな山下さんが大声をだしたからだ。
「え??」
「自分が死んでたらなんて考えないで下さい。
生かされたと思って前を向いて生きて下さい!!」
そんなこと無理だ。
テレビやマンガみたいに彼女が死んで主人公は前向きに生きてく・・・
そんなこと現実ではありえない。
母さんの時は前を向こうと思った。
けど、今回は梨架だ。
母さんだけでも凄い悲しい思いをしたのに・・・
貴方にはこの気持ちがわかりますか??
家族を失い恋人を失い・・・
俺を支えてくれていた人たちが次々と・・・
次々と俺の前から姿を消してゆく・・・
この気持ちに耐えられますか??
自分じゃなければ簡単に前を向けって言えるけど、
『前を向く』ってことは難しいことなんだ。
「無理です・・・」
「え??」
「そんなこと簡単に言わないでください!!俺の気持ちもわからないくせに!!」
そう言ってその場から去った。
