Turquoise BlueⅡ 〜 夏歌 〜




「シノ!その工場の場所判る?」

マキちゃんが再び
シノに問い返す


――そして解ったのは

一応、
公の掲示板だから
ズバリ
住所そのものでは無かったんだけど
地元の人間しか知らない場所とか
呼び名で


"ピョン太郎公園を右"とか
"後ろに、ズンババアの駄菓子屋"とか
"テネシーが、よく歩いてる道"とか


それは地元民なら、すぐわかって

いつもの最寄り駅
学校とは反対の、
海に近い工場が集まる一帯


"ギャラクシアンじじい"の家の裏に
安全第一と看板に書かれた
小さな工場があった

二階建てで
一階が工場、上が家みたいで
細い階段の先の窓には
あかりが着いてる

窓が、いっぱいに開いてて
テレビと、上の壁に
表彰状みたいなのが見えた



―― 明かりの消えた一階

塀の内側に、
塗料の缶みたいな
大きくて緑のドラム缶が
たくさんあるんだけど

―― 庭の片隅
緑の長い、支柱が立ってて
茄子がたくさん成っていた

ウチの茄子と
少し形が違い、何だか丸い

ザルが横に置いてあって
少ししゃがんで魅入ってしまった


ここのお母さんが
育ててるんだなあ…と思った








『……何でいんだよ』


小声で耳元

飛び上がって跳ねたら
マキちゃんに取り押さえられて
塀に
危うく頭をぶつけそうになったのを
救われた