「…でも ジッとしてるなんてムリだよ…」
―― 私は
青山さんが今どんなキモチでいるか
考えた
涙が出て来て、思い切り拳で擦る
マキちゃんが言う
「…色々動いてるとは思うの
アニキも『こっちはこっちで』って
言ってたし」
シノが眼鏡をキラリと光らせた
「私…家戻ったら
色々掲示板覗くよ…手掛かりとか
あるかもしれない
去年のコンテストの騒ぎの時も
某掲示板に載ってたらしいし」
―― そうなのだ
あのコンテストで
『Azurite』を狙った人が居た
皆が鉄柵に波の様になっていたその中で
そんな事件が起こっていたなんて
後からマキちゃんから聞いて知った――
「…青山さんが電話して来ないのって
何でなんだろう」
四人で校門を出る
景色は、群青色と茜の、混ざった空
シノが言う
「…だって絶対絶対、
大切な思い出のあるベース…
ライヴ終わった後、必ずキスして
ステージ後にする位…
そんな絶対に
…灰谷くんだって
『あの人が、人に触らせるなんて
考えられないって言ってた奴だよ?
それをユカに貸してくれて…
優しいから、
うちらの心配真っ先にしてくれたけど
…平気じゃないよ
『声』に絶対出るって!
だから…電話して来ないんだよ」
「……うん」
マキちゃんが涙ぐむ
「…他の人達って
連絡とれないのかなあ〜」
ユリちゃんのその言葉に
私はデカイ声を出してしまった
「なに?出来そう?!」
マキちゃんが腕を掴む
私は、携帯を掴んだ
―― シークレットで入っていた
その名前と番号
…怖くて、一回もかけてない
は行
『 灰谷 遠矢 』


