マキちゃんが突然
我に返ったみたいに
「…そう言えば私
家出てから、家に連絡してないや
ユカの所に押しかけてるかもしれない…」
「マキちゃんのお母さん?
…うちのお母さん
近所の煩いおばさんとか、
あしらうの上手いし
平気だと思うんだけどなー
あ!
別にマキちゃんのお母さんが
どうのって言うわけじゃなくて」
両手を振って慌てる私に
マキちゃんが片手で口を抑えて
クスクス笑う
目の腫れがだいぶ引いて
綺麗なマキちゃんに戻って来た
「ユカちゃんのお母さんだっけ
こないだ近所に
下着泥棒出た時、捕まえて
新聞に載ったの」
皆、大爆笑
「……そんな事もあったねえ…」と
かなり渇いた目で言ってみる
『彼』は
『…さすが扇風コプターの奥さんじゃん』と
お腹を抱えて笑ってて
青山さんは
「お父さん、心配したろう」と
しゃがんだまま、目を大きくさせる
緑川さんは、
「なんかウチのカミさんに似てるなあ
あれも高校の時、
痴漢はっ倒したから…」
皆は緑川さんの奥さんを
知ってるみたいで
『やりそう』『納得』とか言って
また笑い声を大きくさせた
赤池さんは
「俺の高校の時のカノジョは
優等生で、少し、はかなげで
交換日記だけして喜んでた…
自転車で坂道を送ったよ…」
緑川さんは
「青春!」と吹き出し
皆がワイワイ話してる中
マキちゃんが
「…青山さんのは?」
そう、思い切ったように
笑って聞いた
青山さんは、ん?と一言いい
「……ぶっ壊れてたよ」
そう、笑った
マキちゃんが
「…ぶっ壊れた青山さんて
想像つきません」と驚くと
「あ
さっき海で
俺に電話来てたの真木からだから」
「…アニキ?」
「…もしかしたら連絡行くかもって
花火してる事も
さっき皆でここに居る事も連絡したから」
「……すいません」
――― 青山さんは
私が『彼』に玉砕した時みたいに
ぽんぽん、とはマキちゃんに
やらなかった
…アニキさんは…
青山さんも
マキちゃんのキモチを
とっくに、知ってるのかもしれない


