それから緑川さんは
マキちゃんが作った
ストロベリーピンクの楽譜を見て
全部の曲が、殆ど同じコードで
作られている事
でも、自分の中の手数が増えれば
実はそれでも、違った感じで
曲が作れる様になる事
「鬱屈しまくった
俺らみたいな曲
皆、自分の傷は見たくないから
この手の歌を、嫌う人は嫌うし
…ストロベリーピンクのオリジナルは
その傾向を、だいぶ真似してるけど
やっぱり君らは俺らじゃないから
なんか
チグハグに聞こえてしまう
…等身大でいいんじゃない?
それが多分きっと
一番響くよ
しかもユカちゃん達の通ってる道は
多少の違いはあれど
皆通って来た道だしね
折角輝いてる『今』を歌うべきで
頭で考えた『過去』を歌うのは
もっと先で良いんだと思うんだ」
「……"CheaーRuu"の
あのプロモも、あの時の皆の
今……」
「…だねえ
Globalは、大元は海外の会社で
その分家みたいなもんだからさ
外国形式で、何かする時の
契約書の量は凄いけど
かなり好きな事は、やらせてくれる
『Azurite』の為に建った事務所だから
新しい所だし
新設校、来たみたいな感じ?
………あれは
今は映像の仕事してる、
俺らの友達がとってくれたからさ…
好きに撮ってくれって言ったらあんな感じになった」
――池上海平
「……赤池さんは
引越し屋さん
緑川さんは、ジーンズショップ
『彼』は……空
青山さんは……」
――― わからない
緑川さんは
トン、と灰皿に灰を落とした
そしてそれ以上は話さず
「これは俺の意見だし
皆にも聞いてみれば?」
そう言って、部屋に入ってしまった


