「あー…
こうやってアズは
どんどん遠くに行っちまうのな

まあ…学校の空の下で
文句言っても仕方ないけどさ…

せっかく、来年には
東京行くのに…」



「―――武藤 東京行くの?!」

「行くよー
何か、モデルやるらしいね 俺」

「なにその、ひと事みたいな…」


「実感、まだ湧かないッスヨ

春先に、
原宿に出掛けた時、スカウトされて

でもその時は、ガラじゃないし
名刺だけ貰って、
連絡してなかったんだけど

たった一回きりの人生だし
特に目標もなかったし
やってみるのもいいかなと…」



「…くそぅ…武藤も羽根持ちか…」


「馬鹿だなあ
羽なんか、皆あるんだぜー

でも、自分からは
あんまり見えないんだ

背中にあるから」


「……詩人発見。」

「 あはは 」

「てか、原宿でスカウトって
マジであるんだね
…私、都市伝説かと思ってたよ…」


「な。俺もびっくりした 」


――― そう言えば
背は高いし、膝から下長いし
…武藤の手 見て
『彼』の事思い出したし……


目鼻立ちもはっきりしてるし…


「……うわ!今、気が付いた!!
武藤ってカッコイイんじゃん!!」



「……………。

やっぱり断ろう…」

「 な?! 」


「…中学まで、肥満児だったしね…
ちょっと夢みちゃった…ふふふ」

「何いきなり、
過去の闇に包まれてんの?!
ちょっと皆!
この人どーにかして!!」



金網をよじ登ろうとする武藤を
皆で止めた

武藤も本気じゃなくって
笑ってるんだけどね。