――― ガラス張り
まずは、それ
壁一面に鏡があって
どこを向いても、自分が見える
床は
影を全部映すみたいな
黄土色の木が張り巡らされてて
ライヴハウスにあったみたいな
大きなギターアンプが二個
ベースアンプは三個あって
一個が一番大きいんだけど
太い鉄網みたいなのが
表面を覆っていて、
その奥に、スピーカーが見える
そして本体の上に、
また長い四角い物が乗ってて
今まで見たことが無い形だった
「……ししょー これ何?」
「真空管のアンプ」
「………。」
普通のと、何か違うんだろうか
……解んないから怖いので
いじるのはやめた
そして真横で
いきなりドラムの演奏が始まり
本気でビクッとする
誰か他にいるのか
そう思ったら
―― ドラムの席に、青山さんが座ってた
「ししょー?!ドラムも叩けるの?!」
「灰谷も叩けるよ」
青山さんがそういいながら
『彼』にスティックを渡そうとすると
『……今日はやだ』と
マイクを通した声で、
渋い顔をして、髪をかきあげた
「なんで」と
青山さんが笑いながら席を直していると
『…十字キーとボタン
連打し過ぎて手が筋肉痛』と、ぼやいた
青山さんは大笑いして
私もマキちゃんも笑っていたら
少し不機嫌そうに
『…行くよ』
そう言って
突然、『彼』の歌が、始まった


