階段を下りて
すぐにあったのは
広いフロアに、テーブルとソファー
壁に、観葉植物と、
アロワナが泳ぐ、大きい水槽
コーヒーメイカーみたいのと
白い紙、コップ
自動販売機が横に立ってて
ボタンには、値段がついていなかった
「…ししょー」
「ん?」
青山さんは早速ソファーに座って
煙草に火をつけてる
「……もしかして
ここの飲み物、全部タダ?」
「うん」
着眼点は、まずそこか、みたいな
顔をされて、笑われる
左には三つ、ドアがあって
一番奥は、ガラス張りの窓になってた
マキちゃんはギターを背負いながら
そのガラスの向こうを覗き込む
マイクスタンドが
天井から下りて来てるみたいなマイクと
楽譜立てが一個
そして、黒いヘッドフォン
椅子がいくつか、並んでいて
そのマイクの向こうに
隣の部屋へと続く、
扉とガラス窓があった
PCが二台と、何かボタンが沢山ついた
レコーディング機材が、沢山見える
「……凄いミキサー」
マキちゃんが目を輝かせて
それに魅入る
横で、ガチャリと音がして
…――『彼』のブーツが入って行く
そして青山さんも
ロビーの灰皿で煙草を消して
立ち上がり
扉の前に立って、腕を組み
「ここ」と
左手で、指をさす


